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人生の指針としての倫理(「翁の文」による)

ここのところ、「倫理」について書くことが多かったので、今、過去記事を読み直していて見つけた記事を再掲載しておく。「倫理」というのは、この程度のことである。しかし、これができれば「市井の聖人」と言えるだろう。まあ、世の「聖人」には詐欺師が多いし、安藤昌益は聖人こそが世の中を悪くした張本人だと言っているが、無名で市中に埋もれた聖人ならいいのではないか。

(夢人注)安藤昌益の「聖人批判」の概要を某論文より転載。要は、孔子などの「聖人」が封建社会を固定化する精神的基盤になった、という批判である。現代でも「学識者」が政府の道具となり政権擁護の盾になっているのはご存じの通りだ。

 目次に、「聖失ヲ糺ス下ニ自然ノ真道自リ見ハル 儒失ノ部」とあるように、儒教を中心に諸子百家を次々と批判しながら、伝統イデオロギーの誤りを「糺ス」ことに重点が置かれている。そして、徹底して聖人の欺瞞に満ちたベールを引き剥がすことによって、現実の封建的な権力・権威を論破せんとしており、長らく「門外不出」、「開けて読むと目がつぶれる謀反の書」という伝承があったほどのものである



(以下引用)

冨永仲基の「真の道」

冨永仲基の「翁の文」の一節で、「神なき時代の倫理」は、これに尽きるのではないか、と思うので、私自身の別ブログから自己引用する。もちろん、江戸時代と今では事情も変わっているから、すべてそのままで通用するとは思わないが、人生における基本的な心得として実に中庸を得た、健全な「道徳律」だと思う。まあ、仏教でも言う「諸善奉行、諸悪莫作」を具体的に、かつ行いやすい道徳律として言っているわけだが、悪事を行って巨万のカネを積むよりも、この「真(まこと)の道」を守って生きれば、自分だけでなく世の人すべてが幸福になる、ということである。真理は平凡なものだ。
以前に青字にした部分とは別に、ここが大事かな、という部分を赤字にしておく。

(以下自己引用)面倒なら、私が青字にした部分だけ読めばいい。

翁の文(第六節)

それでは、その真の道の、今の世の日本で行われるべき道はどうかと言うのなら、ただ物事の当たり前のことを務め、今の仕事を本として、心をまっすぐにし、身持ちを正しくし、物の言い方を丁重にし、ふるまいを慎み、親がいる者はよくこれに仕え、(翁の自注に言う、六向拝教を見るべし、もっぱら五倫のことを説いている、また儒者もこれを重んじている、また神令にもこの五種を載せておられる、これは真の道は三教の道にも欠かせないものである印である、と。)主君がある者は、よくこれに心を尽くし、子がある者はよくこれを教え、臣下がある者はよくこれを治め、夫がある者はよくこれに従い、妻がある者はよくこれを率い、兄がある者はよくこれを敬い、弟がある者はよくこれを憐れみ、年寄りに対してはよくこれを大切にし、幼い者に対してはよくこれを慈しみ、先祖のことを忘れず、一家の親しみを疎かにせず、人と交わってはまごころからの誠意を尽くし、悪い遊び(注:遊蕩のことだろう。)をせず、優れたものを尊び、愚かな者をあなどらず、おおよそ我が身に当てはめて(考え)、悪いことを人に為さず、鋭く角々しいことをせず、僻んで頑なにならず、せかせかと余裕の無い態度をせず、怒ってもその際限を誤らず、喜んでもその守りを失わず、楽しんでもそれに淫せず(溺れず)、悲しんでも迷いに至らず、十分なことも不十分なことも、みな自分の幸福だと心を満足させ、受けてはならないことは塵ほどのものも受け取らず、与えるべき場合には国や天下でも惜しまず、衣食の良い悪いも、自分の身の程に従い、贅沢をせず、吝嗇でなく、盗まず、偽らず、色を好んでも理性を失わず、酒を飲んでも乱れず、人に害の無いものを殺さず、食物を慎み、悪いものを食わず、多くは食べず、(翁の自注に言う、云々:この段の論拠が古典や経などにあることを述べているだけなので省略する。)暇な時には自分の身に利益のある芸を学び、賢くなることを務め、(翁の自注に言う、云々:同様に省略)今の文字を書き、今の言葉を使い、今の食物を食い、今の衣服を着、今の調度を用い、今の家に住み、今の風俗習慣に従い、今の掟を守り、今の人と交際し、さまざまな悪いことをせず、さまざまな良いことを行うのを真の道と言い、また今の世の日本で行われるべき道とも言うべきである。

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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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