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湯煙の立つや夏原 狩りの犬

私が、毎日の早朝の(と言うか未明の)散歩の時の浮遊思考を書いているのは、前にも言ったように、認知症(ボケ)防止策であるが、それ自体が私には面白いから、というのは言うまでもないだろう。それ以外の時の思考より、なぜか散歩の時の思考は、跡をたどりやすいのである。それは、一定の時間内の、だいたい同じ道筋をたどる歩行なので、歩く以外の動作をする必要がなく、周囲を眺める以外は思考が思考だけに限定されるからだろうと思う。
たとえば、前にも書いた(と記憶する)

湯煙の立つや夏原 狩りの犬

という俳句、あるいは駄洒落が今日はまた頭の中に浮かんだのだが、その経路は覚えている。
その直前に、頭の周りを蚊柱のような羽虫が群れて空中にあったのだが、「蚊柱」は「立つ」ものであり、しかも「」のようにぼんやりとしている存在だ。そこで、

立つや夏原 狩りの犬

という連想になったのである。その前に、出がけに準備したより暖かい気候だな、と途中で考えたのが「原」を連想させた可能性もあるし、その少し前に、犬を連れて散歩をしている中老人(中年から老人の間の年齢の男)とすれ違ったのが「」を想起させたのかもしれない。

ちなみに、「湯煙の」の狂句は、(私の記憶が確かなら)伊丹十三の「ヨーロッパ退屈日記」というエッセイ集に出て来るもので、実はプレスリーの「ハウンドドッグ」の歌詞の駄洒落である。

You ain't nothing but a Hounddog

英語の音のyou ain'tを「湯煙(ゆえん)」に、「nothing but a」を「夏原(なつばら)」にし、さらに「湯煙(ゆえん)」を「ゆけむり」と読ませ、「夏原(なつばら)」を「なつはら」と読ませて、最後の「hounddog」を「狩りの犬」にして、全体を俳句風にしたものである。超絶的技巧だと私は思う。作者が誰かは知らない。伊丹十三本人だろうか。

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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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