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思い出の美しい香り

我々の知識の中にはいくつもブラックボックスがあるのだが、たとえば、「浦島太郎」の話の中で、太郎が玉手箱を開けると煙が立ち昇って太郎はたちまち老人になる、という部分がある。なぜ乙姫がそのように意地の悪いことをしたのか、という疑問は誰でも子供のころに持っただろう。
で、先ほど読んだ「風土記」現代語訳の丹後の国風土記逸文(全体は散逸してわずかに残った部分だろう)を見ると、かなり内容が違うようだ。
まず、太郎(名前も違うが、便宜的にこう呼んでおく)の相手は乙姫ではなく、亀が変身した美女である。そして、望郷の念に駆られて故郷に帰ることにした太郎に、亀姫は小箱を与え、「自分と再会したければ、この箱は開けるな」と言う。で、故郷に帰った太郎は既にそこでは時間が何十年も経っていて、周りは見知らぬ人ばかりであると知る。まあ、「リップ・ヴァン・ウィンクル」とまったく同じである。そして、失意してさまよっていた太郎は、深く考えないで例の小箱を開けると、かぐわしい香りが立ち昇り、空中に消えていく。そこで太郎は亀姫との約束を思い出し、二度と彼女に会えないことを知るわけである。つまり、太郎は老人にはならない。小箱は、いわば海の底の楽園で過ごした日々の記憶が香りとして納められたものだろう。
太郎が老人になる、という改変は、そのような失意のままで生き続けるより、老人となってボケるか早死にしたほうがいいんじゃね、と思った後世の人の創作だろう。

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酔生夢人
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仙人
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考えること
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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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