「日本のサービス産業の労働生産性は米国の約半分」――。そんな衝撃的な調査結果を、日本生産性本部が12月12日に発表した。米国の就業1時間当たりの労働生産性水準を100として、2010~2012年の日本の水準を見ると、日本のサービス産業は49.9%しかないことが明らかとなったのである。
業種別の内訳を見ると、「情報通信業」(74.0%)と「電気・ガス」(62.9%)では比較的健闘しているものの、「金融」(48.0%)や「運輸」(44.3%)では半数割れ。「卸売・小売業」(38.4%)や「飲食宿泊」(34.0%)になると米国の3割台にとどまっている。
識者は「人材の育成が必要」と指摘するけれど
過去のデータを見ると、日米格差がさらに広がっていることが分かる。1998~2000年には対米比で102.2%を誇っていた「情報通信業」は28.2ポイントのマイナスとなり、「金融」に至っては81.8%から33.8ポイントも減らしている。
その一方で、製造業の生産性は2010~2012年の平均で69.7%と善戦。特に「化学」は143.2%と米国を圧倒しており、「機械」も109.6%と肩を並べている。この結果について、調査の責任者である滝沢美帆・東洋大准教授は、会見で次のように問題点を指摘している。
「日本のサービス業は新しい技術を取り入れて効率的にモノを売ることができていない。そのための人材の育成が必要だ」
しかし、このような差は「新しい技術」だけの問題なのだろうか。「労働生産性」とは、従業員1人当たりが一定の労働時間にどのくらいのモノやサービスを生み出しているかを示す指標であり、「生産量」を「労働投入」で割って算出する。
つまり日本のサービス業の生産性が低いということは、米国と同じ「生産量」のサービスを生み出すために、「労働投入」が多すぎる可能性がある。例えばポテトチップス1袋を売るために、米国では日本の半分の労働量しか投入していないということだ。
サービス業従事者の給与水準は平均以下
確かに日本人と米国人の購買行動は大きく異なる。24時間営業のコンビニで一袋ずつ買う日本人と、郊外の大型スーパーに車で乗り付けて大量に買い込む米国人では、自然と生産性に差がついてしまうのは仕方がないのかもしれない。
ネットには、日本の「おもてなし」が足を引っ張っているという指摘もあった。
「コンビニに『”いらっしゃいませ”がなかった!何を考えているのか?』ってクレームがくるんだぜ」
そういう「過剰サービス」が日本の生産性を下げているのかもしれないが、文化の違いもあってすぐに改善されるとは思えない。
もうひとつの可能性は、分子の「生産量」が低すぎることだ。接客サービスにおける「サービス対価」のことで、従業員の給与にも直接反映してくる。ちなみに平均年収が約400万円だった2012年時点で、「卸売・小売業」では356万円、「宿泊業・飲食サービス業」は235万円と、いずれも平均額に届いていない。
「日本のサービスはオマケだから生産性はゼロ」
サービスの対価として顧客が支払うお金が少ないから生産性も上がらないのであれば、「値上げをすれば生産性が上がる」という考え方もできる。ネットでも、
「日本で『サービス』って言ったら『オマケ』の意味でタダなんだから生産性はゼロ」
「日本は米国の半額でサービスが受けられる。旅行客には天国だが、働くにはクソ」
など、サービスに対する日本人の認識の低さを指摘する声がある。逆に言えば値上げをしないまま、無理に生産性を高めようとすれば、賃金を支払わない「サービス残業」が発生する。ネットにはこれを危惧してか「凄惨性が高まりますな」と皮肉をいう人もいた。