私は、こういう大衆心理の分析が大好きなので、この指摘はとても面白い。この、大衆の「リベラル」への反感を逆に見れば、アメリカや日本における「反知性主義」としてのトランプ旋風や橋下徹人気、もう賞味期限は終わったがボクシングの亀田兄弟人気などは、「馬鹿だろうが阿呆だろうが、チンピラ、不良だろうが、本音を口にする人間が好きだ」という大衆心理があるのだろう。さらに言えば、工作員以外の純粋ネトウヨの心理も「世間は言わないが、俺は本音で自分の嫌いなものを嫌いだと言ってやる」というある種ヒロイックなものがあるかもしれない。さらにさらに言えば、学校におけるいじめも、「嫌いなのをいじめて何が悪い」という気持ちがあるのではないか。
もちろん、「何が悪い」どころではなく、悪いに決まっているのだが、自分の幼児性を堂々と行動に出すことが一種の快感や英雄感を伴っているのかもしれない、と推測することもできるのではないだろうか。まあ、ただ馬鹿で精神が未熟なだけだが、一般大衆の「反知性主義」というものは案外根深いものがありそうだ。その辺りを本気で分析しないと、「リベラル」は常に敗北し続ける運命にあるのではないだろうか。
なお、私も初めて英語を習った時に、「いかにも英語らしい発音をする」ことに耐え難い恥ずかしさを感じたものである。これは何だろう。まるで、自分ではない自分を演技しろ、と要求されたような感じ。あるいは「黄色い猿でしかない日本人」のくせに白人の真似をさせられている、という感じだろうか。当時の自分が日本人であることに意味や意義を感じていたとは思えないから、たぶん前者だろう。
今でも、「英語らしい英語の発音」には拒否感があるから、テレビなどで帰国子女たちがいかにも英語的な発音の英語をぺらぺら喋っている姿には、まず不快感が先立つ。つまり、言葉にすれば、「自分が恥ずかしいと思う行為を臆面もなくやるから、連中は『恥知らず』だ」という気持ちか。
なお、英語を勉強すること自体を私は拒否するものではない。英語の達人たちへの敬意もある。だが、日本人すべてが英語ができるようになる必要はまったく無い、と思っている。英語圏の人間が日本で不自由の無いようにする必要など無い。日本に来るなら日本語を少しは学べ、である。
なお、英国人は、少しでも英語的でない英語発音はまったく聞き取れないという。日本人なら、状況や文脈などから相手の言いたいことを推測して理解しようと努力するが、英国人の(特に知性や教養の低い連中は)そういう努力をまったくしないという話である。そして、自分が英国人であるだけで、他国人(英語の下手な人種)を見下す権利を生まれつき所有していると絶対的に信じているらしい。「イギリス毒舌日記」という面白いブログがあるが、その中には英国に住む日本人がぶつかる英語コミュニケーション問題への絶望的努力の話がよく出てくる。
(以下引用)
小田嶋隆 @tako_ashi 9時間前
- まあ、オレ自身、本場っぽい発音で英語をしゃべることはとてもじゃないが恥ずかしくてできない。特に同じ空間に日本人がいる場合は、露骨なカタカナ発音の英語でしゃべることになる。中二病の一種なのかもしれないが、これはたぶん一生治らない。
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- いわゆる「リベラル」を嫌う人たちの多くは、その「リベラル」が掲げている言説の内容にではなくて、「臆面もなく正しいことを言う姿」に反発を感じているわけで、その気分は「英語の授業の時に本場っぽい発音で教科書を読みあげる生徒」を嫌っていた心情と通底する何かなのだと思う。
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