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「銃後の妻」ははたして貞淑だったか

なるほど、面白い視点の反戦論だ。実は取り締まる側のお偉いさんが、銃後の妻に手を出す事例もかなり多かったと私は推測している。そりゃあ、若い男が払底していて、町が若い女だらけなのだから、女好きの「戦争に行かなくていい連中」には大チャンスだろう。で、前線に出た夫たちは「特攻しろ」である。銃後の社会の現実(自分の妻の浮気)を知ったら死んでも死にきれないだろう。戦争ほどアホなものはない。

(以下引用)

2023-09-02

「銃後の妻」の浮気について

占領米軍の性暴力に触れた増田に影響されて「帝国日本戦時暴力京都大学,2013)」という論文斜め読みし始めたんだけど、第1章のテーマが、いわゆる「銃後の妻」の浮気についての話でそっちが面白くなってしまった。そもそも、出征した兵士自分奥さん浮気してんじゃねーかと気になって仕方なかったみたいで、前線から実家近辺の警察かに問い合わせる奴が相次いだらしくてまあ悲喜劇なんだけど、「このままじゃ兵士士気ヤバい!」てことで、全国で警察が極秘に、予防のための講習会を開いて妻らを組織化したり、名簿作って「浮気してないか監視をしたり周辺に聞き込みしたり、妊娠したら本当に旦那の子調査したり……と、隣近所、地元、妻同士、警察と何重にも監視の目を行き届かせたらしい。その上、いざ実際に浮気が起きたら兵士本人には知らせず、かといって姦通罪は親告罪であるため、間男を「住居不法侵入」という名目処罰していた(たとえ妻が了承しても「戸長」たる夫の許可がない住居の立ち入りは不法侵入にあたるという理屈らしい)とか、いろいろ苦労して浮気を防ごうとしたらしい。ああ、「銃後の妻の貞操」つーのは、こうやって国家必死こいて作り出した神話だったのかー……という奇妙な納得と言うか感心というかが得られて、なかなか有益だった。


いや、なんか当時を扱った小説とかでも、戦時中の出征兵士奥さんてなんか妙に貞淑に描かれてるイメージあるじゃん? で、それが「戦前道徳教育」のおかげ(逆に言えば”戦後風俗の乱れ”)みたいなこっちの勝手思い込みがあったんだけど、そんなの思いこみだよ、と頭を小突かれた気分で、やっぱそういう”美しい”話というのは大体神話に過ぎないということを再確認させられたのだった。


なお、実際のところは、そうやって警察取締りしてさえも、結構な数のかーちゃん浮気したらしい。まあ、生命危険のある状況に若い男女がおかれたらそらそうなるやろ、って感じで浮世の道理である。下は内務省資料引用上記論文から


適当訳(引用者による))


浮気する奥さんへの対応について


出征兵士奥さん浮気する奴がいていろいろヤバいので、こっそり呼び出して注意したり間男を転勤させたりとかヤバい処置したけど、その件数が全国でもうヤバい


(原文)


不義の悪評ある留守宅に対する措置


応召者妻にして留守中素行不良にして風評に上る者ありて一般家族への影響及出征者の士気等も顧慮し適切なる方策を講ずる要あるもの時に発生する状況にあり、因つて之に対し隠密の間に説諭を加へ、或は姦夫の雇傭主と懇談を為し之を他に転ぜしむる等の方法を講じて遺家族及び出征者の名誉保持に善処したる事例は瀧川警察署管下其の他に於て相当数に上り居れり。(内務省警保局,1939)


まあ、実にグロテスクな話である。とーちゃん兵士に送り出して浮気するかーちゃんグロテスクなんではない。間男でも、それを取り締まる警察でもない。ただ、それらを含んだ戦時風景が全体としてグロテスクしか言いようがないんである戦争を美しいというのは、よほど頭のネジがぶっ飛んでいるか、それともメディアに手もなく踊らされている奴だけだ。


戦争という巨大な暴力人間世界に生み出す風景は、常にグロテスクなのだから僕は戦争が嫌いだ。


anond:20230731030542


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男性
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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
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