彼女の肩に腕を回し、草が一杯に生えた野原に彼女を導き、一言も言わずに私は彼女を地面に横たえた。「あなたはあまりお喋りじゃないわね」微笑みながら彼女は言った。彼女は自分の靴を遠くに投げ、自分の腕を私の首に巻いた。私は彼女の唇にキスし、もう一度彼女の顔を見るために彼女から身を離した。彼女は夢のように美しかった。私は自分が彼女をこんなふうに腕に抱いていることがまだ信じられなかった。彼女は、もう一度キスされるのを待って目を閉じた。
その時、彼女の顔が変わり始めた。白い、生肉のようなものが彼女の鼻孔のひとつから這い出した。それは蛆だった。巨大な、私がかつて見たどんな蛆よりも巨大な蛆だった。そして、もうひとつ、もうひとつと蛆たちは彼女の二つの鼻孔から現れ、突然、死の悪臭が我々の周囲に立ち込めた。蛆たちは彼女の口から彼女の喉に落ち、彼女の目を横切って彼女の髪の中に隠れた。彼女の鼻の皮膚は滑り落ち、その下の肉は溶けて二つの黒い穴だけが残った。その間にも蛆たちは争いあうように現れてきて、その青白い体は周囲の腐肉を油のように汚した。
その時、彼女の顔が変わり始めた。白い、生肉のようなものが彼女の鼻孔のひとつから這い出した。それは蛆だった。巨大な、私がかつて見たどんな蛆よりも巨大な蛆だった。そして、もうひとつ、もうひとつと蛆たちは彼女の二つの鼻孔から現れ、突然、死の悪臭が我々の周囲に立ち込めた。蛆たちは彼女の口から彼女の喉に落ち、彼女の目を横切って彼女の髪の中に隠れた。彼女の鼻の皮膚は滑り落ち、その下の肉は溶けて二つの黒い穴だけが残った。その間にも蛆たちは争いあうように現れてきて、その青白い体は周囲の腐肉を油のように汚した。
(訳者注:原作を読んでいないで、ここまでこの作品を読んできた人は、この成り行きにかなり驚いたのではないか。正月そうそう、何てものを!と思った人もいるだろう。しかし、私は村上春樹のいい読者ではないが、この短編小説は、構成といい話の進展といい、比喩や文章の巧みさといい、村上春樹のベストではないか、と思っている。だから、紹介の意味も含めて、英訳からの再日本語訳という妙なことをしているのである。)
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