私は村上春樹の一番最初の作品を若いころに読んで、「書くべきことを持たない、小説好きで中味の無い人間が無理に書いたような小説だな」という印象を持ち、その後ほとんど読んだことが無かったのだが、たまたま買った英語の本の中に、超有名英米大家の短編作品と並んで彼の「踊る小人」が入っており、興味を感じて読んでみると、非常に面白い。もちろん、私のダメ英語力だから細部は分からないが、とにかく面白く感じたので、原作を読まないままに「英語訳からの日本語訳」をして別ブログに載せたのだが、こういうのは著作権法的にどうなのか。まあ、ちゃんと村上春樹の作品の英語訳からの日本語訳だと断りを書いているのだが、原作者が怒ったら削除するつもりはある。むしろ、作品宣伝になるのではないか、と思うのだが、ダメだろうか。
その一節をここに転載しておく。
まるでホラー映画のスローモーション撮影みたいな描写を文章でやっているのが凄い。
(訳者注:少し遠出をする予定があり、なるべくそれまでに最後まで訳したいので、一日に数本、記事を上げることにする。それはそれとして、実に、「彼女」の変容の描写が凄い感じで、私がこれまで読んだホラー小説の中でも白眉である。フェミニストと思われている村上春樹の意外な一面がここにあるのではないか。)
その一節をここに転載しておく。
まるでホラー映画のスローモーション撮影みたいな描写を文章でやっているのが凄い。
膿汁が彼女の目から流れ落ち始め、その純粋な力が彼女の眼球を痙攣させ、彼女の顔の両側から転げ落ちさせた。目のうろの後ろの裂け目となった洞穴から、白い紐の球のような蛆の塊が彼女の腐った脳に群がり溢れていた。彼女の舌は巨大なナメクジのように彼女の口から垂れ下がり、膿んで落ちて行った。彼女の歯茎は溶け、歯はひとつひとつ落ちて行き、やがて口そのものが無くなった。彼女の髪の根本から血が噴出し、その髪の毛の一本一本が抜け落ちた。ぬるぬるした頭蓋の下から蛆たちが皮膚を食い破って表面に出てきた。腕は私を強く抱きしめ、その握力を弱めることはなかった。私はその抱擁から自由になろうと空しくもがき、顔をそむけ、目を閉じた。無数の塊が私の胃から喉にこみ上げてきたが、私はそれを吐き出すことができなかった。私は自分の体の皮膚と中味が裏返ったような気持ちだった。私の耳の傍であのドワーフの笑う声が再び響いた。
(訳者注:少し遠出をする予定があり、なるべくそれまでに最後まで訳したいので、一日に数本、記事を上げることにする。それはそれとして、実に、「彼女」の変容の描写が凄い感じで、私がこれまで読んだホラー小説の中でも白眉である。フェミニストと思われている村上春樹の意外な一面がここにあるのではないか。)
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