静かな山あいの集落で26日、女児1人を含む6人が痛ましい遺体で見つかった。宮崎県高千穂町押方(おしかた)の民家で6人が殺害されたとみられる事件。一体、何があったのか。付近の住民らは不安な夜を過ごした。【清水晃平、城島勇人、中里顕】
「こんな小さな集落で殺人事件が起きるとは……」。近くの50代女性は声を震わせた。見つかった6遺体は、民家に住む飯干保生(いいほしやすお)さん(72)一家6人のうち次男の昌大(まさひろ)さん(42)を除く5人と、昌大さんの知人男性とみられている。女性は「仲の良さそうな一家で、女の子はまだ幼いのに。可哀そうに……」と涙ながらに話した。
連絡が取れなくなっている保生さんは、牛の生産をしながら茶や米、シイタケなどを作っていた。元JA職員の男性(74)は「飯干さんはJAの組合員で真面目でいい人だった。無事でいてほしい」と祈るように話した。昌大さんは同県五ケ瀬町の木材会社に勤務していたという。
昌大さんの長女で小学2年の唯さん(7)が通う小学校も対応に追われた。教頭によると、26日朝に登校してこないため、担任が自宅と両親の携帯電話に電話したがつながらなかった。教頭が自宅を訪ねても不在で玄関の引き戸には鍵がかかっていた。午後になって報道で事件を知ったという。同小はこの日、全児童の保護者に迎えに来るよう連絡した。
6人の遺体が見つかった民家から西に約300メートルの地点では、現場につながる上り坂の道路が警察車両などで封鎖され、県警の職員が警備にあたった。付近には街灯がなく、車1台が通れるほどの山道だが、現場近くには報道関係者が多く詰めかけ一時騒然とした。
飯干さん方の北東約2.5キロにある「神都高千穂大橋」では26日午後4時ごろ、欄干下115メートルを流れる五ケ瀬川で性別不明の遺体がうつぶせで一部が水没した状態で見つかった。橋のたもとには、昌大さんが乗っていたとみられる白い軽乗用車が放置されており、川では遺体の引き揚げ作業が続けられた。
近くの住民らによると、昌大さんは木材を運ぶ運転手をしており、朝早く自宅を出て夜遅くまで仕事をしていた。25日までは同社の慰安旅行に出掛けていたという。