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子供という爆弾

話が錯綜していて、芥川龍之介の「藪の中」のように何が真実なのか分からない事件だが、ひとつ言えるのは、子供というのはどんなきっかけで自殺するか分からない、実に精神の脆弱なものだ、ということだ。
下の記事を読むかぎりでは、担任から「いじめの加害者のひとり」という誤解を受けたことが自殺の原因としか思えないが、大人の頭だと、そんなので自殺するか、と不思議に思える。また、実際にいじめをしたのかしなかったのかも不明である。これは、「いじめ被害者」とされている生徒の勘違いか、意図的な捏造か、それともいじめは実際にあったのか、調べても事実は分からないまま終わるだろう。少なくとも、自殺した少年は「自分は冤罪だ」と思っていたようだ。しかし、その悔しさを晴らす方法が「当て付け自殺」だったならば、その子供にとって自分の命というのはそれほど簡単に捨てられるものだったということで、自分が作文に書いた内容を裏切っている、ということになる。まあ、学校に出す作文に本音を書く子供などいるはずもないが、この記事の記者はその作文の内容を重視して「ドラマ」化しているようだ。
この担任の教師も暴力的な部分のあった教師のようだが、それとこの自殺とは無関係なことだと思われるし、おそらく誰が担任でもこの「いじめ事件」の処理をうまくこなすことは難しかっただろうと思う。その点では(おそらく教職を棒に振る可能性もあり)気の毒な被害者だという気もする。



(以下引用)





サッカー部でゴールキーパーとしてプレーしていた男子生徒のスパイクとグローブ。生徒は亡くなる前日にも試合に出場していた=鹿児島県奄美市で樋口岳大撮影 © 毎日新聞 サッカー部でゴールキーパーとしてプレーしていた男子生徒のスパイクとグローブ。生徒は亡くなる前日にも試合に出場していた=鹿児島県奄美市で樋口岳大撮影

 「担任が、息子や同級生たちの話をしっかり聞いてさえいれば、息子は死なずに済んだ」。死亡した男子生徒の父は、遺影の前で無念を語った。


 男子生徒は真面目で責任感が強く、勉強熱心で成績も良かった。小学1年からサッカーを始め、中学のサッカー部ではたった1人のゴールキーパーとしてチームを支えた。亡くなる前日もいつも通り試合に出場していた。残されたグローブは、繰り返しシュートを受けて擦り切れ、大きな穴がいくつも開いている。家族は仲が良く、生徒は学校での出来事をよく話していた。


 男子生徒が亡くなる約2カ月前の2015年9月15日にも、11月2日に欠席した同級生が授業後に泣きだしたことがあった。報告書によると、担任は「嫌なことがあったら話すように」と言い、同級生は生徒10人の名前と行為を挙げた。その中に「消しゴムのかすを投げる」と男子生徒の名前が挙がり、担任は生徒を指導した。


 生徒は帰宅後、母に「同級生がちょっかいを出してきたのに自分が怒られた」と不満を述べていた。11月4日に指導を受けた後の下校時にも友人に「意味が分からない。前もあった」「何で分かってくれないのか」などと語っていた。帰宅後に担任が家庭訪問した時、祖母が様子を見に行くと男子生徒は号泣していた。直後、生徒は命を絶った。


 「なぜ、息子は自殺をして罪を償うというところまで追い詰められなければならなかったのか。疑問に答えてほしい」。昨年5月の第三者委初会合で、父はそう訴えた。


 第三者委の聞き取りでは、日常的に暴力や暴言などがあった担任の指導が複数の生徒の証言から浮かび上がった。「ベルトをつかまれ、突き飛ばされた」「怒って教卓を倒した」「部活の練習でミスをした女子生徒にボールを当てた」「たばこの吸い殻の入ったコーヒー缶を顔付近めがけて投げられた」……。男子生徒らへの指導の際にも担任は別の生徒をたたいていた。


 11月4日の指導では男子生徒は当初、自分が同級生にしたことを思い出せない様子で、担任も「本当にちょっかいを出したのか」と疑うほどだった。しかし、担任はその後も謝罪をさせたり、叱責したりしていた。


 父は「担任の高圧的な姿勢が、無実の人に自白を迫る誤った指導につながった」と感じている。


  ◇   ◇


 男子生徒が毎日欠かさなかった自宅学習のノートにはびっしりと丁寧な文字が書きこまれている。一方、男子生徒の遺書は、同じ人物が書いたとは思えないほど乱雑で、殴り書きした筆跡だった。


 第三者委は遺書などから、人一倍責任感が強かった生徒が「言われなきこと」で担任から「(同級生が)学校に来られなくなったらお前ら責任取れるのか」と叱責されるなどし、心理的圧力を感じたと推察。さらに、家庭訪問で担任から「誰にでも失敗はある」などと言われたことで、男子生徒は、同級生をサッカーに誘うなど関係を保とうとした努力が否定され「これが失敗なら、これ以上どう頑張れというのか。もう、死ぬしか責任を果たせない」という怒りや絶望感を抱いたのではないか、と考察した。


 男子生徒は、亡くなる1、2カ月前の作文に、曽祖父から戦争体験を聞き「僕は、生きていることに感謝するようになった」と書いていた。戦争で左腕を失った曽祖父が右腕だけで抱きかかえてくれたことに感謝し「両腕以上の愛情で支えてくれた」と記していた。


 「息子は命の大切さも、家族から受けた愛情も十分に感じていたのに、命を絶たなければならなかった。同じことはどこでも起こりうる。どの先生も子供を追い詰める可能性があることを肝に銘じ、子供の立場に立って考えてほしい」。生徒の遺書と、作文を見つめ、父はそう訴えた。


  ■   ■


<男子生徒が亡くなる1、2カ月前に書いた作文>


 語り継がなければならないこと


 僕のひい祖父は、日本のために戦った一人であった。


 ひい祖父が若い頃、赤紙が届いてフィリピンに行ったそうだ。写真を見れば、堂々としていて、男らしかった。


 戦場に行ったが、左腕を無くして帰ってきたそうだ。左手に銃弾が貫通し、その後、破傷風になり、自ら左腕を切り落としたという。


 だが、ひい祖父はどんなときも決して涙を見せることはなかったという。


 そして年月がたち、僕が生まれた。ひい祖父はとても喜んでいたという。僕は成長していった。ひい祖父は僕と毎日遊んでくれていつも笑顔だった。とても幸せそうな毎日だった。


 そんなある日、ひい祖父は戦争について語ってくれた。空は米軍の飛行機、海は戦艦、陸上では銃弾が飛びかっていたという。また「絶対に戦争はしてはいけない。戦争をしても何もいいことはない。今はとてもいい世の中だ。幸せだ。お前は生きていることに感謝しろ」と、ひい祖父はよく語ってくれた。だが、ひい祖父も年をとり、しゃべれなくなっていった。僕は、生きていることに感謝するようになった。


 あなたは、一分、一秒を大切にしていますか。生きていることに感謝していますか。


 今、友達と遊んだり、会話をしたりしているのが僕の日常生活だ。あたり前のように感じるかもしれないが、戦争が起きている頃の時代の人々は、いつ友達や家族がいなくなるか分からないというのが、この頃の人々の日常生活なのだ。今、僕達はお金があれば何でも手に入る。


 しかし、お金で買えないものもある。


 一つは、命。ひい祖父は、僕に戦争について伝えることで、命の大切さを教えてくれた。戦争に行った友人も亡くなり、身内も襲撃されたという。戦争に対する怒り、悲しみは、はかりしれないものだと思う。


 だから、僕は、大切なものをすべて失うからもう二度とやってはいけないと思う。


 二つ目は、愛情だ。ひい祖父は片腕しかないのに、僕をよく抱きかかえていたという。そして、僕がふざけて高い所から落ちそうになったときに片腕で支えてくれた。僕にとっては、両腕以上の愛情で支えてくれたと思う。


 ひい祖父は、僕が六年生の頃の十二月に、家族に見守られながら亡くなった。僕もひい祖父の死に立ち会うことができた。とても落ち着いた表情だった。心の中でありがとうと言った。戦争に行ってつらい思いもたくさんしてきたと思うが、僕に語ってくれたことを僕は、語り継がなければならない。


奄美市の第三者委が認定した男子生徒の自殺を巡る主な経過


2015年9月15日 同級生が授業後に泣いた。担任に「嫌なことがあったら話すように」と言われ、同級生は男子生徒ら10人の名前と行為を挙げた。男子生徒には「消しゴムのかすを投げられた」とした。担任は放課後に10人を指導し、同級生に謝罪させた。男子生徒は、友人や家族に「同級生からやってきたのに、自分が怒られた」と不満を述べた


10月5日 男子生徒が家族に、担任について「意味の分からないところで怒る。目を見るのが怖い」などと話す


11月2日 同級生が欠席。同級生の母親が担任に「友達に嫌がらせを受けるので行きたくないと言っている」と伝えた


3日 男子生徒はサッカーの試合に出場


4日朝 同級生が登校。担任が紙を渡し「他の生徒からされた嫌なことを書くように」と告げる。同級生は、男子生徒を含め5人からされた行為を記入。男子生徒については「別の生徒が男子生徒に方言を教えて一緒に言ったりする」などと書く


昼 男子生徒が別の教室にいた同級生に給食を持って行き、「サッカーをしよう」と誘う


放課後 担任が生徒5人を指導。担任は男子生徒らに紙を渡し、やったことを書かせたが、男性生徒は何をしたのか思い出せない様子で、担任も「本当にちょっかいを出したのだろうか」と疑うほどだった。男子生徒は「自慢話の時、『だから何?』と言った。話を最後まで真剣に聞けていなかった」と書いた。担任は「責任取れるのか」などと5人を叱責し、謝罪させる。男子生徒は「意味分からんこと言ってごめんなさい。これからも仲良く遊びましょう」と言い、泣く。男子生徒は下校時、友人に「意味が分からない」などと不満を言う


午後5時40分ごろ 男子生徒帰宅


同6時ごろ 担任が事前連絡なしに男子生徒宅を訪問。生徒に「誰にでも失敗はあることなので、改善できればいい」などと言い、生徒は泣いていた。自宅は両親不在で、祖母らしかいなかった


同6時55分ごろ 帰宅した母親が首をつっている男子生徒を発見


5日 市教委が臨時校長研修会で「いじめた側の子が責任を感じて自殺した」などと説明


9~12日 市教委が教職員30人から聞き取り


18~27日 中学の教員が、サッカー部員と同じ学級の生徒、同月4日に担任から指導を受けていた生徒らから聞き取り


30日 校長が市教委に「(自殺の)原因は特定できなかった」とする基本調査報告書を提出。担任による指導の具体的な内容には触れず


16年1月8日 市教委が全校生徒にアンケート。「男子生徒がいじめてるとか見たことがない」などの回答。教員について「いきなり切れてたたく」「暴力を振るう先生が何人もいる」などの回答も


5月19日 遺族が市に第三者委の設置を申し入れ


8月16日 校長が遺族に「第三者委設立を(市に)お願いすることを再考できないか」などと発言


17年5月14日 第1回第三者委開催


18年12月9日 第三者委が市に報告書を提出








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