「エメラルド・タブレット」の中の「すべての物はこのひとつのものに起因している」の「このひとつのもの」が何か、明確に言われていないが、それは物質ではなく「法則」、それも「(精神界も含め)全宇宙を成立させる法則」のようなものではないか。まあ、この種の思考はいろいろあり、その中でも古代中国の「陰陽の原理」というのはかなり的を射ているように私には思える。数学・物理における「プラスとマイナス」など、まさに陽と陰である。
「陰陽原理」は、私の解釈では、陰と陽のどちらが優れているとか上位にあるという話ではなく、陰と陽の相互作用や交替により、世界は変化する。つまり、ある意味では「変化」が基本だと考えてもいい。それを示すのが「易」という言葉だ。「易」は「変化」の意味で、すべては変化する、というのが易の基本思想である。(ただし、「易経」では陽を陰より上位と見る階級思想がある。しかし、その陽も陰に駆逐されることもある。
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そのように考えると、「エメラルド・タブレット」が示す思想は、実は古代中国の思想のバリエーション、あるいはその「錬金術」的解釈だろうという気がする。旧約聖書の「伝道の書」や仏教の「空」の思想などは易の「無常観」とほぼ同質であると私は思う。ただ、易のほうが、宗教性が薄く、世界や歴史(人生を含む)を陰と陽の「サイクル」と捉えている点で、単なる「すべては空だ」とする思想より勇気と元気を人に与えるのではないか。栄えている者を戒め、不幸な者に希望を与えるのが、「変化こそが常である」という思想である。
(以下引用)記事中の引用文の中の赤字は夢人による強調。
ちょっと前にやや妙な「月と女性のサイクルのリンク」についてのような記事を書きました……以下の記事です。
[記事] 「夜空の月と、地上の月」 : ワクチンでの月経異常の拡大から思う「古代からの月のサイクルと女性のサイクルのリンク」の崩壊
In Deep 2022年10月16日
そこに、「エメラルド・タブレット」というものを載せています。
『薔薇十字団の秘密の教え』の最終ページにあるエメラルド・タブレット
Die geheimen Figuren der Rosenkreuzer
この内容を示した「文章」は、このイラストが掲載されているページの下にラテン語で書かれているのですが、Wikipeida - エメラルド・タブレットにもありますし、そこに、アイザック・ニュートンによる英訳を日本語に訳したものもあります。
ただ、それもまた「下なるものは上なるもののごとく」というような文語調でして、どうも私は文語調の日本語をよく読めないのですよ。それで、以前、「ですます調」で、訳したことがあるのです。11年くらい前のこちらの記事にあります。
ちょっと長いですが、転載します。最後のほうに出てくる「ルメス・トリスメギストス」というのは、伝説的な錬金術師だそうです。
エメラルド・タブレット (ニュートン訳より / 1680年)
これはまったく偽りのない真実です。
唯一となる奇跡の実現のためには、下のものが上のように、あるいは上のものが下のように。
そして、すべてのものはたったひとつの適合によってひとつからやってきます。
なぜかというと、すべての物はこのひとつのものに起因しているからです。
「太陽」がその父で、「月」がその母、「風」はそれを胎内に宿し、「大地」はその乳母です。全世界の、すべての完全性の父がここにいます。
その作用と力は完全です。それが地に転換されれば、偉大なわざによって大地から火をつくり、粗雑なものを精妙なものに変えることができます。
それは地上から天へ昇り、また再び地へと戻り生まれ変わります。
そして、上のものと下のもの両方の力を身につけるのです。
そして、あなたにとって世界の奇跡は自らのものとなります。
あなたからすべての曖昧な概念は消え去るでしょう。
これはどんなものより力強く、どんなフォースよりパワフルです。どんな精妙なものも、どんなに堅くて強いものも貫き通します。
こうして世界は創造されました。
希有な結合、そして多くの驚くべき奇跡によって。
このため、私はヘルメツ・トリツメギストスと呼ばれています。
私は全世界の知恵の三つの部分をマスターしています。
私が錬金術の偉大さについて言いたいこと、すなわち、太陽の作用について私が言わなければならないことはこれで終わりです。