その三十一 シュナン山
「ヴァルミラさんはロンコンというお坊さんをしりませんか?」
南に向かいながら、ハンスはヴァルミラにきいてみました。
「ロンコン? 聞き覚えはあるな。たしか、この近くの山にいるんじゃなかったかな」
「その山の名前は?」
ハンスは胸をおどらせて聞きました。
「ええと、シュナン山だったと思う。ここから左に二日ほどの距離(きょり)だ」
「ぼく、少しそっちに立ち寄ります。みなさんには後でおいつきます」
「気をつけろよ」
ピエールが声をかけるのにうなずいて、ハンスはオウムのパロだけをお供にシュナン山に向かいました。グスタフに乗るよりも、犬のピントよりも、ハンスの魔法の早足のほうが速いからです。
「パロ、お前、シュナン山はわかるか?」
「わかるとも。おれは世界中の山を知ってるよ」
「よし、お前、空から場所を教えてくれ」
やがて、パロは一つの山をめがけて飛んでいきました。ハンスもその後を追って山に入ります。
その山は、近くを美しい谷川が流れる高い山でした。山のほとんどはそそりたつ奇岩で、岩の上には松の木が生えています。そして、高いところは白雲にかくれています。
お寺が見えてきました。お寺といっても、小さな家ですが、ふつうの家とは少しふんいきがちがいます。屋根は赤いかわらぶきで、屋根の四隅(よすみ)は軽くはねあがっています。家の壁(かべ)は白い土壁ですが、柱や窓は金や緑にぬられ、けっこうはでです。
「ごめんください」
ハンスは入り口から中に声をかけました。入り口には戸はありません。雨や風のときにはどうするのでしょう。
「お師匠はいないよ」
中にいた八歳くらいの男の子が言いました。
「どこに行ったの?」
「さあね。山のどこかさ」
「いつ帰ってくるのかな」
「夜になるかもしれんし、今すぐ帰ってくるかもしれんさ」
ハンスはとほうにくれました。仲間たちが心配するでしょうから、あんまりここで時間をつぶしたくありません。
その時、窓からふと外を見たハンスは、向こうの空から何かが来るのを見ました。
入り口から外に出たハンスが見たのは、ここに近づいてくる小さな白い雲でした。
「ヴァルミラさんはロンコンというお坊さんをしりませんか?」
南に向かいながら、ハンスはヴァルミラにきいてみました。
「ロンコン? 聞き覚えはあるな。たしか、この近くの山にいるんじゃなかったかな」
「その山の名前は?」
ハンスは胸をおどらせて聞きました。
「ええと、シュナン山だったと思う。ここから左に二日ほどの距離(きょり)だ」
「ぼく、少しそっちに立ち寄ります。みなさんには後でおいつきます」
「気をつけろよ」
ピエールが声をかけるのにうなずいて、ハンスはオウムのパロだけをお供にシュナン山に向かいました。グスタフに乗るよりも、犬のピントよりも、ハンスの魔法の早足のほうが速いからです。
「パロ、お前、シュナン山はわかるか?」
「わかるとも。おれは世界中の山を知ってるよ」
「よし、お前、空から場所を教えてくれ」
やがて、パロは一つの山をめがけて飛んでいきました。ハンスもその後を追って山に入ります。
その山は、近くを美しい谷川が流れる高い山でした。山のほとんどはそそりたつ奇岩で、岩の上には松の木が生えています。そして、高いところは白雲にかくれています。
お寺が見えてきました。お寺といっても、小さな家ですが、ふつうの家とは少しふんいきがちがいます。屋根は赤いかわらぶきで、屋根の四隅(よすみ)は軽くはねあがっています。家の壁(かべ)は白い土壁ですが、柱や窓は金や緑にぬられ、けっこうはでです。
「ごめんください」
ハンスは入り口から中に声をかけました。入り口には戸はありません。雨や風のときにはどうするのでしょう。
「お師匠はいないよ」
中にいた八歳くらいの男の子が言いました。
「どこに行ったの?」
「さあね。山のどこかさ」
「いつ帰ってくるのかな」
「夜になるかもしれんし、今すぐ帰ってくるかもしれんさ」
ハンスはとほうにくれました。仲間たちが心配するでしょうから、あんまりここで時間をつぶしたくありません。
その時、窓からふと外を見たハンスは、向こうの空から何かが来るのを見ました。
入り口から外に出たハンスが見たのは、ここに近づいてくる小さな白い雲でした。
PR