まずは、すでに既成事実化し、馴らされてしまった小選挙区制の問題を共産党が指摘している。
2007年11月22日(木)「しんぶん赤旗」シリーズ これでいいのか 選挙制度 小選挙区制度 民意ゆがめる“虚構の多数”
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-11-22/2007112203_01_0.html 上は、小選挙区制度の意味をグラフ化したもの。
2005年の選挙では、自民党が全体の4割を得票したが、議席数は7割を占めた。
小選挙区制度は、そもそも、自民党が人口過疎地帯である地方の農村部で支持が大きいため、人口比例ではない選挙区別の結果にすれば、大都市で支持数が多い革新系議員よりも、効率的に当選を得られるという陰謀的思惑で進められたものだ。
まさに思惑が的中し、以来、自民党は4割しか得票がないのに、7割の議員を得ることになった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E9%81%B8%E6%8C%99%E5%8C%BA%E5%88%B6 国民の持つ投票の権利が、平等でないことがはっきり分かる。自民党の支持基盤である地方の農村部では、小選挙区によって一票が重く、革新政党を支持する民衆が多い大都市部では、一票が軽い。
このシステムが、基本的に自民党や保守議員を支えている。
実は、選挙が広く国民の民意を反映しているわけではないことは、古くから言われてきた。
2021.07 政治に変化を 政治に対する見方を変えるゆがんだ日本の民主主義 民意を反映させる改革が不可欠
http://ictj-report.joho.or.jp/2107/sp06.html 現職・世襲有利の日本の制度
日本の選挙制度は、世界でもまれにみるほど、現職や世襲に有利な仕組みになっています。日本では、1994年の選挙制度改革で、小選挙区比例代表並立制が衆議院に導入されました。この制度では、候補者は小選挙区で負けても、比例代表で復活することができます。この仕組みが、現職や世襲に有利に働いています。
中選挙区から小選挙区に変わっても、選挙の実態は変わりませんでした。選挙戦は、いわゆる「ジバン(地盤)、カンバン(看板)、カバン(鞄)」の「三バン」で戦います。それにより、現職や世襲は一定の票数を確保できます。その結果、たとえ小選挙区で負けても、比例で復活することができます。これが現職・世襲有利の背景になっています。
現職や世襲有利ということは、新規参入が阻まれるということです。各国がクオータ制を導入するなどして女性議員を増やしてきた一方、何もしなかった日本は、政治分野の男女平等で世界から大きく取り残されてしまいました。
また、この制度の下では、党の公認がなければ候補者は選挙戦を戦えません。その結果、党執行部が公認権と政治資金の流れをコントロールする動きが強まり、自民党の中央集権化、トップダウン化が進みました。小泉政権下の自民党の中央集権化に伴い、執行部は非主流派を排除しました。それにより党内の右傾化が進みました。
選挙制度改革から約25年がたちましたが、自民党には有力な国会議員が育っていません。72歳の菅首相、82歳の二階幹事長、80歳の麻生副総理のように、同じ面々が権力を握り続けています。この背景には、新陳代謝を促さない、現職や世襲に有利な日本の選挙制度があると言えます。
自民党が勝てる理由
日本の政治の現状は、有権者の声を正確に反映しているとも言えません。
私が注目しているのが、絶対得票率です。絶対得票率は投票を棄権した人も含め、すべての有権者を母数にし、何割の得票があったのかを測る数値です。
絶対得票率をみると、自民党は、2000年代初頭の森政権以降、小泉政権時の総選挙で20%台になったほかは、13~18%程度で推移してきました(比例区)。すべての有権者の2割にも満たない得票しか得ていない政党が、小選挙区制の作用の結果、議席を占有しているのです。
驚くべきは、2012年の総選挙以降、安倍政権はすべての総選挙で、自民党が2009年に民主党に大敗した際の得票数に達していないのです(グラフ)。つまり、自民党は選挙に負けたときの得票数に達していないにもかかわらず、衆議院の圧倒的多数の議席を占め続けてきたのです。これは驚くべきことです。
なぜこんなことが可能なのか。第一に選挙の投票率が低いからです。投票率が低く、固定層からの得票と公明党票の上積みがあるから、自民党は絶対得票率が低くても、選挙で勝つことができます。
この状態を続ける秘訣は、低投票率を維持することです。森元首相がかつて、「(無党派層は)寝てしまってくれればいい」と発言したのは、投票率が上がると、この戦略が崩れるからです。
絶対得票率が低くても自民党が勝てるもう一つの要因は、野党票が割れることです。この二つの要因によって、自民党は政権を維持してきました。
低投票率が勝利の秘訣ということは、政権維持のためには、多くの有権者に投票を棄権してもらった方がいいということです。有権者に支持される政策を実現するよりも、政治にうんざりしてもらって投票に行かない人が増えた方が、自分たちに有利になる。
菅政権の政策が民意とかけ離れても、政権が揺るがないのは、そのためです。こうした状況が果たして健全なのか。ぜひ考えてみてほしいと思います。
選挙制度が自民党の現職や世襲に有利な仕組みになっている上に、日本は選挙運動でも与党が有利になっています。日本の公職選挙法は「べからず法」と呼ばれ、何をしてはいけないかが事細かに規制されています。その中には、恣意的で不透明で理屈に合わない規制がたくさんあります。先進国でも異例です。
問題の背景には、1925年に男子普通選挙が実現した際に導入された規制が、戦後にも抜本的に改革されず引き継がれたことがあります。高い供託金や戸別訪問の禁止は、労働者政党の選挙活動を妨害するために導入されたものでした。そうした仕組みが今も引き継がれています。
自民党は、政党助成金をつくっておきながら、経団連などから企業団体献金を受け取っています。税金と企業献金の二重取りです。制度創設時の約束と違うということを忘れてはいけません。
こうした選挙に関する仕組みのゆがみを踏まえると、日本は本当に民主国家の要件を満たしていると言えるだろうかと感じます。それくらい、自民党や現職・世襲に有利な仕組みが選挙制度の中に埋め込まれています。
アメリカでも、民主主義の要件を語る際に、「公正な競争条件(レベル・プレイング・フィールド)」が整っているかが議論されるようになっています。暴力的な警察の介入や弾圧がなくても、例えば、黒人の受刑者が多く、参政権がはく奪されているように、民主主義の基盤がゆがめられているのです。日本でも、非民主的な制度が、人々が政治に声を届ける際の大きな障害になっています。民主主義を強くするためには、選挙制度を見直すことは必須だと考えています。
政権交代の必要性
コロナ対応や五輪対応を見ても、菅政権はまともに対応できていません。「森友・加計問題」「桜を見る会問題」「広島の参院選買収問題」など、最近の自民党の不正を挙げれば枚挙にいとまがありません。にもかかわらず、安倍・菅政権は、まともにアカウンタビリティ(説明責任)を果たしていません。このままでは、民主主義は根腐れしてしまいます。
欧米諸国だけではなく、韓国でも台湾でも政権交代は起きています。ツイッターで、日本では政権交代を国家転覆かのように捉える人もいるという指摘がありましたが、言い得て妙だと思いました。
日本の有権者は、変えることに対して臆病になっています。しかし、このままでは状況は悪化するばかりです。日常生活と同じように「プランA」がだめなら、「プランB」を用意する発想が必要です。
政権交代のためには、民主党政権がなぜ失敗したのかを検証する必要もあります。私が民主党政権の失敗を研究して感じたことは、党を組織として回す議員が少なかったということです。今の野党議員は、一人ひとりは優秀で能力が高いと思います。しかし、どの組織もエースストライカーばかりでは、組織はうまく回りません。裏方となり、組織を調整する人も必要です。
一方、民主党の中にも縁の下の力持ちの役割を果たした議員もいました。そこには労働組合出身の議員が多く含まれます。企業や自治体、労働組合の中で組織を調整する経験を積んだ上で議員になったことが、そこに生かされています。知名度や派手さに欠けるかもしれませんが、自分一人で活動しているわけではないという感覚が生きたのではないかと思います。
労働者として働いた経験は重要です。そうした経験のある人を政治の場に送り込むという意味で、労働組合はいまも欠かせない存在です。労働組合の役割発揮に期待しています。
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引用以上
日本の選挙制度が民意を反映できない理由を具体的に挙げてみよう。
① 平均的所得の普通の市民が、国政選挙に出馬しようとすると、世界でも希な高額の供託金を強要される。
衆院小選挙区で300万円、比例で600万円だ。有効投票の10%以上を獲得しないと没収される。
https://www.naikaku.org/2024/07/31/kyotakukin/ 2017年衆院選埼玉一区を例にとる
10%に満たなかった維新の小檜山清人氏は、300万円を没収されたことになる。
普通の平均年収程度の市民が、選挙に出れば、選挙運動費用だけで1000万円以上、供託金が300万円が必要になり、さらに自民党の公認を得ようとすると3000万円の提供を求められるのだという。とても負担できる金額ではないので、選挙というのは、最低でも5000万円くらいかかる「大金持ちの道楽」ということが鮮明に分かる。
② 日本の選挙は血統の世襲制度が大きな意味を持っている。それは「知名度」が人気のバロメーターだからだ。だから、知名度の高い、メディア露出者、タレント、映画スターなどが有利だが、もしもタレントが出馬してしまうと、以降は、政治色がついてしまいCM出演やバラエティ番組に出してもらえなくなるリスクがある。
③ 親が議員だと、息子も「政治の専門家」だと勘違いする人が多いので世襲議員は有利である。また、「親議員に世話になったから、息子に恩返し投票」というケースも非常に多い。これは日本的人情の価値観だ。
2014年の衆院選挙の場合、自民党で世襲率は41%とされる。
https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/omoshiro/202210/0015782450.shtml ④ 「地盤、看板、カバン」というのは、中国における「幇」の風習と同じで、日本人も公的制度に頼るとき、権力者による「口利き」が大きな力を持っていて、社会のなかで「幇」に似た「特別の利害関係集団」が存在していることを意味している。
人々は、何か困ったことが起きたとき、行政や制度に頼る前に、自分の所属する「身内の組織体=幇や隣組」などに頼る傾向があるので。これが選挙利権母体にもなる。
権力を持った議員と、特別の関係を結んでおけば、子供の就職や進学などでも有利になると考えている人が多く、そんな人々が自民党を支持している。
逆に、自民党側にも、そうした困りごとニーズに応える相談システムを用意している場合が多い。これが自民党が戦後権力を得てきた最大の秘密である。
田中角栄が戦後最強だった理由は、最強の困りごと相談システムを持っていたからだ。
⑤ 選挙制度は、日本における古くからの人間関係の組織を利用して行われている。
戦国~江戸時代には、戦争のための「五人組制度」が強力に構築されていた。
明治になっても「隣組」や農村部の「結い」制度に引き継がれた。私の子供時代には、隣組が発展した「町内会」が選挙運動に利用されることも普通だった。
また親族共同体も今より桁違いに協力で、親族からの依頼を断れば、「親族八分」にされてしまうから断れなかった。こうした関係は、今では想像もできないほど強力な互助システムだったのだ。
したがって、一見、民主主義的に見える選挙システムだが、当選者もまた、当選させてくれた諸般の力関係に雁字搦めに縛られていて、自分の考えた理想を政治に実現することは不可能に近い。何よりも、支持者の意向を絶対的に優先しなければならない。
それは当選という果実を戴く代わりに、支持者に利権をお返しするという構図になってしまう。
日本で、力を持たない庶民の意思が実現されない最大の理由は、こうした議員を縛る力関係によるもので、結局、当選のために、もっとも必要なのが大金であって、その大金=選挙資金を提供してくれる大金持ちの利権のために奉仕する政治という結果を招くことが避けられない。
それに、この数十年の傾向として、社会全体の右傾化がある。
理由は、1980年代から日本にコンピューターが普及し、その最大の利用形態が、実はワープロやゲームだった。
若者たちの大半が、コンピュータゲームに夢中になって、昔のように野山を泥だらけになって駆け回るような遊びをしなくなった。
そのコンピューターゲームは、私の時代でいえば、「信長の野望」とかシューティングゲームとか、戦闘、戦争物ばかりで、今でもたぶん、戦闘ゲーム、「相手をやっつけて優越感に浸る」という目標は変わっていないと思う。
こうしたゲームの思想が青少年にどんな影響を与えるのか、きちんと考えて警鐘を鳴らしている人はほとんど見かけない。
しかし、私は、シオニズムを産み出したアシュケナージユダヤ人たちの子供たちに課せられた「バルミツバ」という教育義務を見ていて、それは、ユダヤ教徒の子供たちは13歳までに旧約聖書のトーラー五書を暗誦しなければならないというものだが、そのなかに含まれている物語は、恐ろしく残酷で、たとえば創世記34章では、デナという娘を強姦したシケムの一族を陰謀で皆殺しにする逸話が描かれている。
幼い内から、そんなトーラーの洗脳を受けて育った子供たちが、大人になってどんな思想的傾向を持つのか?
今、イスラエルのガザ大虐殺やレバノン侵攻で起きている事態が、その結果であることは容易に想像できる。
だから、戦争ゲームに夢中になって育った子供たちが、どのような人間性になるのかも容易に理解できる。
今の若者たちの大半が、右傾化して日本を軍国化して熾烈な戦争が起きることを望むようになるのだ。そして、それは実現するだろう。
自民党や維新、国民、といった右翼政党が、戦争に向かってまっしらに突き進んでいる根本的な事情が、そうしたゲームによる思想的洗脳にあり、だから青山繁治や高市早苗という好戦的議員が圧倒的な支持を受けているのである。
ゲーム世代が主な有権者になっている選挙で、日本がどんな方向に向かうのか、想像する必要がある。
日本は、これから中国と戦争するだろう。場合によっては、北朝鮮や韓国とも武力対立する可能性がある。もの凄い数の人が死に、艱難辛苦を経験し、戦争の悲惨を思い知らされてから、再び平和な社会がやってくる。