誰か、書の美というものを私に理解できるように分析してくれないものだろうか、と、図書館などに行くとそういう本を探すのだが、ある種の書が美しい理由というのを合理的に説明した本は見たことがない。
以上は新保信長という人の「字が汚い!」という本を読んでの感想のひとつである。この本は私と同様に自分の悪筆に悩んだ新保氏が、きれいな字を書く能力を身に付けるためにあれこれ考え、あれこれ試行錯誤するという内容で、書に関して書かれた本の中では、一番納得できる情報が多く含まれていて面白い。文章自体も面白いし、何より、自分の下手な字が変わっていく途中経過を各章の扉絵にしているのが興味深い。(上手くなったかどうかは一概には言えないが、見やすく、「格好をつけた」字にはなっていったようだwww)
ちなみに、書とは少し違う話だが、日本の「印鑑文化」に対して西洋の「サイン文化」というのがあるわけだが、サインなど真似して書かれたら簡単に書類偽造ができるのではないか、と我々日本人は思うわけである。それに、自分で自分のサインを毎回同じように書けるかと言われたら、それは無理だ。そういう「サイン文化」への疑問に答えるような情報がこの本の中にある。日独ハーフのサンドラさんという人の言葉だ。
先に答えを言えば、日本の銀行やお役所は厳格主義すぎるということなのである。
「サインは人が書くものだから、あるときはこうであるときはこうって、ちょっと違っても全然いいんです。でも日本の場合は印鑑の文化だから、サインも同じでないと認められない。それでトラブルになっちゃうんで、だったら(銀行への登録も)印鑑のほうが便利だなあと」
(でも、そしたらヨーロッパでは「そのサインが本人のものである」というのをどうやって確認しているんですか?)
「たとえばパスポートだったら、写真とサインがあるじゃないですか。そのサインを見て、実際にサインしているところを見て、文字の流れが同じで顔写真も同じだったら『まあ、いっか』ぐらいの感じで」
「ヨーロッパの人からしたら、印鑑だって盗まれたらどうするの、って思いますから」