まあ、もうすぐ終わる朝ドラの話をしても空しいという意見もあるだろうが、こういう「失敗経験」こそが貴重なのである。おそらく億単位のカネをかけた失敗だろう。そして誰もその責任は取らない、というのがNHKのような巨大組織の常である。せめて、反省はして次の朝ドラに活かしてほしいものだ。
NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」も残り4週、物語はクライマックスなのに、ここへきて評判ガタ落ちとはどういうことか。平均世帯視聴率16%割れはこの10年で最低、ネットでもボロクソなのである。 <#ちむどんどん>には「心が全然動かない」「期待するのやめた」「同じエピソードばっかり」「さよなら、ちむどん」と突き放す書き込みが殺到、ライターの吉田潮さんは「話題にならないよりはマシ」と苦笑している。 NHK朝ドラ「ちむどんどん」も? ネットで囁かれる“沖縄舞台の呪い” 何がそんなに不評なのか。「とにかく脚本が薄っぺらで雑なんです。人物が描けてなくて、ガマンして見続けているのに、まったく思い入れができません」と朝ドラ大好き女性は嘆く。 「沖縄の4きょうだいの半生と復帰50年の物語というのですが、登場人物たちはちっとも成長しないし、沖縄の歴史も描かれません。ヒロインの暢子(黒島結菜)はいつも明るくて前向きということになっていますが、独り善がりで突っ走るだけ。もう言い尽くされていますが、長兄のニーニー(竜星涼)はインチキ儲け話に乗っては家族に迷惑をかけ、体の弱い妹の歌子(上白石萌歌)は肝心な時になるとダウン。それを、母親(仲間由紀恵)はじめ周囲のやさしさがカバーして、何となく収まるというご都合主義の繰り返しですから、いい加減ウンザリします」
沖縄に興味があるように見えない
脚本の羽原大介はアメリカ文学の「若草物語」からストーリーを発想したというが、米国東部の牧師一家の4姉妹と、戦場となった沖縄の貧乏きょうだいを重ねるのは無理すぎる。そもそも、羽原は沖縄に興味があるように見えない。1972年の復帰ニュースはとても記憶に残っているというが、当時、羽原は7歳である。本土の小学2年生に関心があったとは思えないし、復帰に至る苦闘・苦悩をどこまで知っているのだろう。 暢子が高校生のときに起きたコザ暴動(1970年)は触れられなかった。「歴史を扱う上でデリケートな部分を多く抱えていることは分かっている」(沖縄タイムス)と語る。しかし、脚本を書くにあたって出かけた山原で、「本当に車が右側通行だったんだ、ドルを使っていたんだ」と改めて驚くのである。沖縄の食も東京の沖縄居酒屋でのリサーチだ。それでいて、「沖縄って、日常の端々が優しいんですよ。地元のみなさんも、本当に親切で真面目で」(番組ホームページ)とわかったようなことを言う。 「『沖縄』というキーワードで検索したら、“こんなのが出てきましたあ”というのをひと通り並べただけなんですよ。脚本家の人選の段階でこのドラマは失敗していると思います。俳優さんたちが力演しているだけに残念です」(朝ドラ大好き女性) 【注意=ここからはネタバレあり】 来週は暢子の沖縄料理店の客足が激減する。豚肉がメニューに合っていなかったのだ。と、ニーニーが働いている養豚場の豚肉が持ち込まれて……。ああ、またその展開ですか。 (コラムニスト・海原かみな)