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本場のアメフトは日本より異常







米国から見た日大アメフト部問題。NFLでは告発者にセカンドチャンスが!







 一連の日大のアメフト反則問題、当該選手の記者会見、それに対する大学側の対応などを見て、多くの人が重苦しい気持ちを感じているのではないだろうか。


 今回の問題が起こる前に選手たち自身が何か行動を起こせなかったのか――過去に似たようなプレーが行われたことはないのか、気になることばかりだ。


 この問題は、チームから干されていた選手がスターティングメンバーの座を取り戻すために行ったわけだが、実はアメフト発祥の地・米国では、「相手を怪我させたらボーナスを与える」というケースが実際に過去に起きていた。

怪我をさせればボーナスが与えられる制度!?

 2012年に米国NFLに大激震を与えたのが、2009年シーズンにスーパーボウルで優勝したニューオーリンズ・セインツの監督、コーチ陣、そして選手が、相手チーム選手に激しくタックルしたり、怪我をさせると、加害者側の選手にボーナスを与える“Bounty Program(バウンティ・プログラム:ボーナス制度)”を行っていたという事件だ。


 これは「ウォーターゲート事件」をもじって「バウンティ・ゲート事件」と呼ばれ、一大スキャンダルとして全米で大きく報じられた。


 セインツでは2009年から2011年に、守備コーチのグレッグ・ウィリアムス主導で、チームの22~27人のディフェンス選手がこのボーナス制度に参加していたと言われる。


 コーチとディフェンス選手がお金を出しあい、相手チームの選手が怪我で退場に至った場合は1500ドル、退場させた場合は1000ドル、倒した場合は400ドルなどと細かく金額が設定されていた。


 逆にタックルの機会を逃したり、反則をとられた場合は「貸し」になり、その分は現金かプレーで支払わなければならなかったとのこと。

このボーナス制度でスーパーボウル出場権を獲得?

 セインツでは、ロッカールームの入り口に用意されている入れ物にスタジアム入りした選手たちがそれぞれ現金を入れ、そこからボーナスが支払われていたとのこと。


 ベテラン選手が率先してこの行為を行い、若手選手に「ボーナスに見合うプレー」をするように煽ることもあったと言う。さらに、プレーオフの時期にはこの金額が倍以上に膨れ上がるよう高額に設定されていたという。


 これらの行為は、暗号化されたメールやチームのプレゼン資料として残っていたのだ。


 ちなみにセインツは2009年シーズンのスーパーボウルで勝利を挙げているが、シーズン中は相手チームの特定の選手を執拗に狙ってタックルし、怪我をさせるプレーが多発していた。


 このボーナス制度で選手たちの士気が高まり、スーパーボウル優勝につながったのであれば、かなり残念な結果だと言える。

関係者は今もコーチ陣としてNFL界に。

 同チームは2006年からショーン・ペイトンが監督をしているが、メールやチーム資料により、ペイトンもこの制度を知っていたことが証明されている。本人は否定したが、NFLコミッショナーはその供述を却下し、2012年4月から2013年1月までの資格停止処分を下したため、2012年シーズンはペイトンは指揮をとることはなかった。


 しかし翌シーズンにはあっさりチームに復帰。


 ペイトンが今も監督としてNFL史上最高年俸を受け取ってセインツを率いているという事実には驚きしかない。


 また首謀者と言われるウィリアムスは2011年にチームを離れたが、その後もNFLチームで守備コーチなどに携わっているほか、関わった選手たちの処分は、短くて3試合の出場停止、長い選手でも1年という裁定だった。


 コーチ主導でこのような制度を実施し、相手選手を執拗に狙い、怪我で退場させていたという事実があっても、コーチや選手から資格を剥奪しないのは米国らしいとも言えるが、わずか1年の資格停止では、抑制効果は薄いのではないだろうか。

実は……1990年代から蔓延する問題。

 上記のボーナス制度は1990年代から行われており、米国、そしてカナダの複数のアメフトチームでこの制度があったことが判明している。


 ちなみにセインツは、2009年シーズンのNFCチャンピオンシップでミネソタ・バイキングスのブレット・ファーブを怪我で退場させた選手には3万5000ドルものボーナスを与えているが、後にファーブも自チームにも同様の制度があったと告白している。


 また元ニューイングランド・ペイトリオッツのブランドン・メリウェザーも「NFLでは『ボーナス制度』は一般的なこと」と話している。


 彼らの言葉から分かるように、残念ながらNFLではこのボーナス制度は常態化しているのかもしれない。


 メリウェザーは所属チームでその制度があったかどうかには言及していないが、相手選手に執拗にタックルする「卑怯な選手」として、多くのファンの記憶に残っている1人でもある。

NFLは自浄努力する試みを開始。

 NFLは昨年、セインツのバウンティ・ゲート事件でボーナス制度についてNFLの調査に協力したマイク・セルーロをNFL事務局のスタッフとして雇用した。


 セインツのアシスタントコーチだったセルーロは、問題が発覚する前にチームを解雇されている。解雇理由が不透明だったことで怒りを感じたセルーロはその後、NFLにボーナス制度を告発。調査に協力し、詳細を明らかにしている。


「真実を言えばもうコーチの道はないかもしれない……しかし、自分はフットボールを愛しているし、もう一度NFLでコーチとして働きたいと思っている」


 セルーロは当時、告発の理由をこうNFLコミッショナーに説明している。


 セインツを解雇された後のセルーロは、大学で働くことにし、NFLからは離れていたという。今回のNFL事務局への雇用は、コーチではなく事務局スタッフとしての採用ではあるが、セルーロは今後、NFL各チームの規律問題などにかかわることになっており、戦々恐々としているコーチ陣や選手は多いかもしれない。








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