https://indeep.jp/look-at-high-blood-pressure-levels-in-this-world/
<転載開始>
2017/11/15
11月14日の米国ロイター通信より
・New blood pressure range means half of Americans have hypertension
それより先に高血圧基準を130に下げていた日本では……
昔、日本では、「年齢 + 90 以上」が高血圧の基準でした。
つまり、
30歳 → 120
40歳 → 130
50歳 → 140
ときて、
60歳 → 150
70歳 → 160
80歳 → 170
というような感じで、これ以上だと「高血圧」ということになったようです。
これは今にいたるまで実に的確な医学的見地であり、
「人間の体は加齢と共に変化していく」という当たり前のことを考慮したものでした。
それが 1980年頃からそういう考慮はなくなり、全年齢共通の血圧の基準が設けられるようになり、その推移が、
・1987年 高血圧の基準160
・2004年 高血圧の基準140
・2008年 高血圧の基準130
ということになり、今では 120台の血圧でなければ「何か言われる」ということになっています。120などというのは、高齢の人にとって一種の低血圧のような、あるいは認知症とかにとても悪そうな影響を与えそうな基準でいすが、そのようになって現在に至っています。
いくらなんでも、この 130 という狂気の基準(高齢者にとっては狂気)は、日本くらいのものだったのですが、冒頭のロイター通信の報道の通り、一昨日 11月13日に、アメリカで高血圧基準が、日本と同じ「 130 / 80 」に引き下げられ、新しいガイドラインにより「要治療」とされるということになったのです。
この新しい基準になった日から「アメリカの高血圧症は 3000万人増えた」のでありました。
このことについて、ロイターの記事を引用したアメリカのゼロヘッジの記事をご紹介しようと思います。
ゼロヘッジは、「これによって高血圧も治療されるかもしれないが、製薬会社の株価も治療されると思われる」というように的確な指摘をしています。
ある日突然「 3000万人 × 血圧降下剤の売り上げ」が入ることが決定するのですから、確かに会社にとっては「とてもいい薬」だと思われます。
まずは、ゼロヘッジの記事を先にご紹介します。
30 Million Americans Were Just Diagnosed With High Blood Pressure, Here’s Why…
Zero Hedge 2017/11/15
新たに3000万人のアメリカ人が突然、高血圧と診断されることになった理由はこれだ
11月13日、その日とても健康に朝目覚めた 3000万人のアメリカ人たちは、彼らの健康状態とは関係なく、この日から突然「高血圧症」としての病気のレッテルを貼られることになった。
この日、アメリカ心臓協会と米国心臓病学会が高血圧の定義を130 / 80 に下げることを決めたのだ。
この時から、それまで治療の必要のなかった 3000万人のアメリカ人たちが高価な高血圧治療を突然必要とされることになった。ロイター通信によれば、この変更によりは、アメリカの成人のおよそ半分の 1億人が高血圧症と診断されることになる見込みだという。
アメリカ心臓協会と米国心臓病学会が発表した新しいガイドラインによれば、130 / 80 以上の血圧を持つアメリカ人たちが治療を受ける必要があるとされている。それまでの基準値は 140 / 90 だった。
この新しい基準下では、アメリカの成人の約 46%にあたる 1億300万人以上が高血圧になると考えられる。
2003年以来続いていた前回の高血圧のガイドラインでは 7200万人だったと推定されているので、 高血圧で治療を受ける人たちが 3000万人以上増えたことになる。
高血圧はアメリカでの死亡数の上位を占める心臓病と脳卒中の主要な要因であるとされている。 2015年に、50歳以上の高血圧患者を対象としておこなわれた大規模な調査によれば、収縮期血圧が 140以上の患者の血圧を 120に下げることで、心臓関連の疾患が 38%低下したという。
しかし、収縮期血圧を 120に下げた患者は腎障害または腎不全の割合が高く、また失神する数も高かった。
驚くべきことではないが、これらの新しいガイドラインは、高価な高血圧治療薬を供給するメルク、ファイザー、ノバルティスなどの医薬品大手の恩恵になると期待されている。
高血圧に対しては比較的安価なジェネリック医薬品として販売されている幅広い種類の医薬品でコントロールすることができるが、これらの薬には副作用があり、新しいガイドラインでは、高血圧と戦うための最初の方法としては、体重を減らす、食事や運動などライフスタイルを変えることから始めることを推奨してはいる。
なお、この「人為的な高血圧基準の微調整」は、株式市場に対しても働くと考えられ、おそらくは、メルク社の株価の方向にも治療的に作用するだろう。
ここまでです。
アメリカも「高血圧 130 で治療される時代」に突入したということで、今後、血圧を下げる薬の売り上げはアメリカでも大きく飛翔していくと思われます。
なお、記事に製薬会社メルク社の株価について言及がありましたが、実は 10月に株価が急落していまして、今回の高血圧基準の発表で株価が盛り返すとみられています。
企業の利益構造から血圧降下剤がこの社会から消えることは無理
世界で最も血圧降下剤を処方されているのは日本ですが、冒頭に、その日本での「血圧の基準値の変更と、高血圧患者数の推移」をグラフで示しましたけれど、その薬の売り上げもすさまじいものです。
下は 2008年までのグラフですが、その後もさらに伸びています。
日本の血圧降下剤の売り上げ
どんなものでも上がり続けるグラフは気持ちいものですが、これもまた見る人が見れば、気持ちのいいものなのかもしれません。
ちなみに、2015年度の日本国内の「薬の売り上げ上位 100」の中に、血圧降下剤は 10種ランクインしています。抗ガン剤が 13種で、このふたつだけで全体の5分の1を占めるという規模となっています。
血圧降下剤も抗ガン剤も共通しているのは「形而上的な薬である」ということで、つまり処方されている側としては、何のためにどうして飲んでいるのかわからない部分もありますが、処方する側としてはその売り上げは重要なものだと思われます。
日本国内での薬の売り上げに関しての詳細は過去記事、
・薬に飲み込まれる《日本》 : 日本国内の薬剤売り上げランキング上位を見てわかる現状の無慈悲
にあります。
いずれにしても、現実には、「血圧と降圧剤の真実」はおそらくひとつで、ずいぶん前の記事、
・健康ブームの中でガンが増え続ける理由 : 世界でもダントツの「薬」消費国である日本は「薬に人間の自己治癒能力を奪われながら」滅ぼされつつあるのかもしれない
などで書いたことがありますが、「病的な高血圧でなければ、薬で血圧を下げることは有害のほうが勝る」と考えます。
松本光正医師の『高血圧はほっとくのが一番 』という著作に以下のようなくだりがあります。
「低血圧症」は儲からない
今井潤東北大教授らが 40歳以上の約 1000人を 24時間血圧計で測り、5年間追跡血宇佐したところ、低血圧の人の死亡リスクが高いことがわかった。脳梗塞や心筋梗塞など血管の病気のリスクは、さらに明白な数値が出たことから、「低血圧だと脳や心臓の血管が詰まりやすい」という結論になった。
これは、高血圧が病気のリスクを高めるという「通説」とは、まったく逆である。
にもかかわらず、低血圧はなぜ軽視されているのか。それは、高血圧に比べて、圧倒的に人数が少ないからだ。5000万人を超える「高血圧症」に比べ、低血圧の人は洗剤患者を含めても、約 1600万人程度。
しかも、普通はよほど重症でない限り、治療や投薬などは行われない。つまり、製薬会社にとって、低血圧はうまみがないのである。
こんなところにも、嘆かわしい事情があらわれている。
私個人も以前はずいぶん血圧などについて調べましたけれど、これについては、私たち医療従事者ではない者たちは、あまり厳密なことを言うような問題でもなく、つまりは、「むかしの日本の基準あたりを考えていればいい」と思っています。
つまり、中年世代なら 160くらいまでならむしろ元気を保てるはずで、高齢者ならそれより高くても健全だと思います。
今の世の中は医療者を含めて多くの人が勘違いしていますが、「血圧」というのは、自分たちのこの体が「どのくらいの血液を送り出してやれば体にとっていいのだろう」と自律神経レベルで「与えてくれている」ものです。
高血圧が悪い、とか、高血圧は病気、なのではなく、自立神経が「このくらいの血の流れがなければいけない」として働いているものであって、それを薬などの物理的作用で押さえ込むことかいいわけはないと思います。
私は「異常な血圧の数値というのは存在しない」とも思っています。
ともあれ、アメリカで新しい基準の血圧ガイドラインが定められたということで、この「130 / 80」の基準の流れは「次は全世界」へと広がっていくのかもしれません。
製薬会社などを含めて、さらに潤う企業も多くなりそうでお祝い申し上げたいですが、「企業がめでたい」という話とは別に、私たち個人はお医者様に「丸投げ」ではいけません。
もし、血圧降下剤を処方された場合どうするのかということなども考えていたほうがいいいかと思います。今は 140や 150というような正常な血圧でも「異常」とされるので、処方は誰にでもあり得ることです。
そして、これは企業やお医者様を責めても仕方ないことで、彼らも彼らで生きていかなければならないのですら仕方ない。医者や企業もサバイバルの中で生きています。
だったら、私たちは私たちなりのサバイバルをしなければならない。
そして真理は、「薬をもらう人がこの世にいなくなれば」それは成り立たなくなるということでもあり、それがすべてのような気がします。
ひとりひとりが変わらないと世界は変わらないとはよく思います。周囲の変化を待っていても、おそらくそれは変わりません。
そういえば、In Deep の過去記事も含めて「健康」のことについて書いたものなどを整理していた時に、もう少しわかりやすくしようかなと、まとめたり新たに書いたりしています。まだ発表する段階ではないですが、少し体裁が整いましたらご案内させていただこうと思います。
この世のサバイバルの方法論は複雑化しています。