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隣のエイリアン 第十章





第十章 先輩と後輩


 


部屋(と言うか、家というか、未だによく分からない)には「父親」がいて、パソコン(デスクトップ型である。)に向かっていた。彼は私たちを見て驚いた顔になったが、驚いたのは娘たちも同じだった。こんな平日の昼間に「大人」が在宅しているのは想定外だったのだろう。


「あ、い、いらっしゃい」保(我が「父親」)は言った。


「あ、お、お邪魔します」


リーダーで、タマコと呼ばれた娘が言って頭を下げた。


「お邪魔しまーす」


「お邪魔しまーす」


他の二人も続く。


「どうぞ、上がってください」


私の言葉に娘たちは靴を脱いで上がった。


私の部屋に入ってドアを閉めると娘たちは大きく吐息をついた。


「親父が家にいるなんて言わなかったじゃねえか。ったくあせったぜ」


タマコが言った。


「息子が女3人連れ込んで、あっちもあせったんじゃないですかね」


もうひとり、こちらはやや細面で背の高い方が言った。


「さすがに、こりゃあ、エッチはできませんね」


他のひとり、丸顔のほうが言った。


「まあ、ゲームでもしようぜ」


タマコが言って、3人は大人しくゲーム(いわゆるアクション型RPGと言うものだろう。)を始めたが、そのうち興奮して大声を出し始め、ゲラゲラ笑ったりし始めた。なるほど、人間にはこういうのが面白いのか。


私は娘たちを放っておき、自室を出た。


パソコンデスクの前の保(我が「父親」)は、困ったような顔をして私を見た。


「おい、お前、あれは3人とも友達か」


「ああ、そうだよ」


「あれは、原幕高校の女生徒の制服だぞ」


父親は父親なりに原幕高校のことを調べていたみたいだ。


「さっき、美郷公園で知り合ったんだ」


「知り合ってすぐに家に呼ぶとは、お前もやるなあ」


「変かな」


「いや、変じゃあないが、少し羨ましいぞ」


「親父も女が欲しいのかい」


「ば、馬鹿、女がほしいなどと下卑た言い方をするな。ただ、母さんが亡くなってからもう十年以上になるなあ、と思ってな」


(これは私が彼に与えた「捏造記憶」である。)


「まあ、親父もそのうち再婚したらいいさ」


「いや、俺はお前を育てるのが最優先だ」


(これは捏造記憶から彼が勝手に作り上げた「意思」である。「自由意志論」など脆いものだ。)


「何か飲み物でも持っていこうか」


「あ、そうだね。お願いします」


前に言ったように、我々はほとんど水分補給の必要性が無いので、人間が絶えず飲み物を飲む生物であるのを失念していたのである。


部屋に戻ってしばらくすると、「父親」が、お盆にコップ4個と清涼飲料水(ジュースとコーラとアイスティーのボトルである。)と菓子皿に入ったお菓子数種類を持って入ってきた。


「あ、済みません」


タマコが言うと、他のふたりも「済みませーん」と声を揃える。


「あんたたち、原幕高校だよね」


と「父親」が言うと、3人は顔を見合わせ、中のひとりが顔を伏せて小声で「やべ、ばれた」と言った。


「こいつも今度原幕を受験する予定なんで、もし合格できたら仲良くしてやってください」


と「父親」が頭を下げると、娘たちは「こちらこそ、よろしくお願いします」と答えた。


 


「1年後輩かあ。こんなにでけえのに中三かよ」


「父親」が部屋を出て行くと、丸顔で小柄な(体つきはふくよかな)方が言った。


「アタイより40センチは高いよなあ」


「何か、スポーツやってたんか」


と背が高く細面の方が言った。


どうやらゲームを続けるのはやめて、こちらの「身元調査」に切り替えたらしい。


「背が高いから、バスケットかバレーだな」とタマコ。


私はスポーツ番組はまったく見ていないので、バスケットもバレーも詳しくは知らないが、ニュース番組の最後のスポーツコーナーで少し見たことはある。


「いや、スポーツはまったくやっていません」


「それでも男かよ。まあ、見た時から、何となく弱っちい感じはしたがな」


タマコが言った。


「でもまあ、顔はいいよな」


と続けたタマコの言葉に勢いを得たように、他のふたりが同感した。


「そうだよなあ、実際、うちの高校でお前に勝てるハンサムはいねえと思うぜ」


と細面。


「お前、彼女いるのか」


と小柄の太目。


彼女という言葉が単なる3人称ではなく、恋人の意味であることくらいは分かる。


「今はいません」と言って、私は自分でもおかしくなった。


「今は」と「いません」が頭韻というか、洒落っぽいと思ったのと、そもそも彼女などいたことは無いからだ。前に言ったように、我が星には「恋愛」の概念が無い。


「あ、笑った。怪しい」


と娘たちは言って笑った。


 


「ところでさ、さっきのカネは返しとく。同じ高校の生徒をカツアゲしたんじゃあ、停学されそうだし」


タマコがスカートのポケットから先ほどの十万円を取り出して私に返そうとした。


「いや、結構です。お近づきの印に、何か皆さんで使ってください」


「お前、気前がいいなあ。ありがてえ。じゃあ、ひとり3万円で1万円は返すわ」


その場でカネを配分して娘たちは引き上げたのである。


















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プロフィール

HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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