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都市と田舎の和解

ナドレック氏の「映画ブログ」から一部転載。
「若おかみは小学生」というアニメ映画の感想記事の一部である。

(以下引用)


■「理想の共同体」のあり方

 実のところ、「子供も働く里」というモチーフこそ、宮崎駿監督、高畑勲監督と仕事をしてきた高坂監督が、両監督から受け継いだ重要な特色であろうと思う。

 花の湯温泉で働く子供はおっこだけではない。温泉街で一番大きな旅館の跡取り娘で、おっこのライバルともいえる秋野真月(あきの まつき)も旅館のために働いてるし、菓子屋の娘・池月よりこも店の手伝いに忙しい。
 しかもこの温泉街に、高坂監督は裏設定を仕込んでいた。温泉街を走るタクシーやリムジンはEV車(電気自動車)ばかりで、エンジン音もなければ排気ガスも出さないのだ(外からやってきたグローリー水領のクルマは除く)。その上、地熱発電があり、山の上の高原では野菜を作り、牧畜もしているという。観光資源として温泉もあることで、花の湯温泉はある程度自給自足できる一つのクニ(別世界)になっているのだ。
 現実と非現実のバランスを少し変えて創造した、子供も労働に従事できる独立国。それが花の湯温泉だ。

 これはまさに、高坂監督がアニメの世界に入るきっかけとして挙げる『未来少年コナン』(1978年)――宮崎駿監督のあの傑作テレビアニメで描かれた理想郷、ハイハーバーを思わせる世界観だ。ハイハーバーも農業や漁業を営みながら、大人も子供も皆で働く村だった。『風の谷のナウシカ』の風の谷を挙げてもいい。宮崎駿監督最大のヒット作(であり高坂希太郎氏が作画監督を務めた)『千と千尋の神隠し』も、異世界の湯屋で小学生が働く話だった。
 やはり高坂監督がその名を挙げる『アルプスの少女ハイジ』――高畑勲監督の名作のアルプスの村も、ヤギ飼いのペーターに代表される、子供が元気に働く世界だった。高畑勲氏が監督し、宮崎駿氏が場面設計・美術設計を担当した『太陽の王子 ホルスの大冒険』の東の村も同様だ。

 一方で、『未来少年コナン』にはハイハーバーとは対照的な工業都市インダストリアがあり、『風の谷のナウシカ』には風の谷とは対照的なトルメキアがあった。『アルプスの少女ハイジ』にはアルプスの村とは対照的な大都会フランクフルトがあった。
 宮崎駿、高畑勲両氏が繰り返し描いたのは、「都会」と「反都会的な理想の共同体」の対比であった。

 だが、『平成狸合戦ぽんぽこ』が理想郷を存続させる運動の敗北を描き、『かぐや姫の物語』が「理想の共同体」の消滅に直面して茫然とする主人公を描いたように、「都会」と「反都会的な共同体」の対立関係は永続的なものではなかった。
 たとえ環境に優しいEV車でも、それを作るには工業社会の工場が必要だし、それを動かすには電気エネルギーをもたらす巨大な機械設備が必要だ。一定以上の人口に衛生的な住環境や医薬品を与えるには工業の力が必要で、それを提供するために人が集まった場所が「都会」なのだ。「反都会的な理想の共同体」といえども、「都会」の支えがなければ存続できない。一方を支持するのは両方を支持することであり、一方を否定するのは両方を否定することだ。なのに両者を対立関係で捉えていては、永続的な社会は構築できない。

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酔生夢人
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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
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